オリンピックの歴史とミッション:クーベルタンの理念

オリンピックの歴史とミッション:クーベルタンの理念

TOKYO 2020 オリンピック。いよいよ開催されますね。
オリンピックほどの大きな催しの場合、莫大なヒト・モノ・カネが動きます。

ヒト・モノ・カネを動かす原動力は一体何でしょうか?
様々な思惑や駆け引きがもちろんありますね。

しかし、戦略だけでは人は動かず、モノやカネも動きません。
オリンピックだって創始期の歴史があり、振りかえると大会における
明確なミッションが存在します。

だからこそ、多くの人が創業者クーベルタンの理念に賛同し、
オリンピック開催が大きな動きとなったのです。

今回はオリンピックの創始者クーベルタンの理念であった
「オリンピズム」を振りかえり、ミッションがヒト・モノ・カネを動かす力
そしてミッションと言動にずれが生じたらどうなるか?を分析します。

ミッションと言動にずれが生じたら…ってなんだか怖いね

そう、ミッションは言語化し、掲げるだけでは意味がないどころか
活用を間違えると、ネガティブな印象すら与えうる
ことが、
今回の記事を読むと伝わるでしょう。

こんにちは、
ミッション発信コンサルタント兼ライターの多田百合惠です。

今日はオリンピックのミッション「オリンピズム」を分析します。

1 オリンピックの理念「オリンピズム」

1.1 クーベルタンのオリンピズムと背景ストーリー

まず、オリンピックのミッションというべき
「オリンピズム」(OLYMPISM)とは何なのか?

日本オリンピック委員会(JOC)のサイトでは次のように書かれています。

「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など
様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって
理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」

JOCサイト「クーベルタンとオリンピズム」より引用

ざっくり言うならば、スポーツを通じて世界をより平和な世界にすること
それがオリンピックの理念です。

へえ、オリンピックの理念って「平和」だったんだね
そういえば平和の祭典って言葉を聴いたような…

オリンピックは平和の祭典。まさに本来のミッションはそうですね。

オリンピックは世界平和を願ったクーベルタンの理念から始まった。

後に「近代オリンピックの父」と言われるクーベルタンは、1863年にパリに
生まれた貴族の三男坊でした。

当時のフランスの情勢を鑑みると、 普仏戦争(1870~71)の影響を受けて
国内は停滞ムード一色。
「なんとかしなくては!」という想いが彼には あったのでしょうね。

教育改革に活路を見出した彼は、イギリスに渡って、パブリックスクールを
視察するわけですが、スポーツに打ち込む英国の青少年たちの姿に感銘を
受けたと言われています。

イギリスといえば、クリケット、サッカー、ラグビー、テニスなどが有名です。
紳士的かつ熱心にスポーツを楽しむ文化が当時から根付いていたのでしょう。

スポーツ×教育改革
思いついたアイデアをもとに、クーベルタンはさらに海外へと見聞を深め
人脈を広げていきました。特にヨーロッパより外、アメリカなどの自由な文化は
彼に衝撃を与えたようです。

「フランスの教育改革のためにスポーツを」と考えていたクーベルタンの発想は
徐々に「スポーツの国際大会を開催する」構想へと移り変わっていきます。

ちょうど1852年にギリシャのオリンピアで遺跡が発掘されたことから、
「オリンピック」と名の付いたスポーツ競技会がヨーロッパ各地で
実は開かれていました。

え、「オリンピック」って国際大会じゃなかったの?

正しくは、クーベルタンが「古代オリンピックの近代における復活」を理想とし
国際大会という形を創り上げたということですね。

1894年、パリで万国博覧会が開催されるということで、チャンスが訪れました。
クーベルタンはオリンピック復興計画を議題に挙げ、結果、満場一致で可決。

最初の大会は1896年に、古代オリンピックの故郷であるギリシャで
そして古代の伝統に則り、世界の大都市で持ち回りにして
4年ごとに開催しよう。
運営のために、国際オリンピック委員会(IOC)を作ろう。

そんな風に制度が決まっていきました。
最初のIOC委員はたったの16人。16人で世界規模の大会を始めたのです。

クーベルタンのストーリーは彼単体のものではなく、時代の流れや
協力者達とのストーリーでもあります。
もっと詳しく知りたい方は、こちらの書籍「オリンピックの真実」
お読みください。

1.2 オリンピックのロゴにこめられたメッセージ

オリンピックのロゴ、五輪マークはあまりに有名ですね。

オリンピックの五輪ロゴマーク。それぞれのカラーにも理念がこめられている。

オリンピックのシンボルである五輪ロゴマークもクーベルタンが考案しました。
彼はロゴのアイデアについて、次のように書き残しています。

青、黄、黒、緑、赤の色は、地色の白を加えると、世界の国旗の
ほとんどを描くことができるという理由で選んだ

JOCサイト「クーベルタンとオリンピズム」より引用

5大陸の色と5つの輪の結合。
どの色がどの大陸を表わすのかは、実は分かっていないそうです。

輪のマークは、古代オリンピックの開催地デルフォイに刻まれていた
休戦協定を中に刻んだ五輪の紋章から着想を得たとのこと。

もっともスポーツですから、勝敗が必ず決します。
理念は平和であっても、争いは起こります。
1908年にクーベルタンは対立し険悪だった参加選手達に次のような言葉を
言っています。

オリンピックの理想は人間を作ること、つまり参加までの過程が
大事であり、オリンピックに参加することは人と付き合うこと、
すなわち世界平和の意味を含んでいる

JOCサイト「クーベルタンとオリンピズム」より引用

ここまでは非常に有名な話ですね。

1.3 オリンピズムに基づくバリューとビジョン

IOCのサイトによると、オリンピズムおよびオリンピック活動の中心的な
価値は次のように述べられています。

Excellence: This is about giving one’s best, on the field of play or in your personal and professional life. It is about trying your hardest to win, but its also about the joy of participating, achieving your personal goals, striving to be and to do your best in your daily lives and benefiting from the healthy combination of a strong body, mind and will.

Friendship: This encourages us to consider sport as a tool to help foster greater mutual understanding among individuals and people from all over the world. The Olympic Games inspire people to overcome political, economic, gender, racial or religious differences and forge friendships in spite of those differences.

Respect: This value incorporates respect for oneself, one’s body, for others, for the rules and regulations, for sport and the environment. Related to sport, respect stands for fair play and for the fight against doping and any other unethical behaviour.

IOCサイト「Olympism」より引用

ざっくり言いますと、オリンピズムおよびオリンピック活動では
バリューとして3つのことを大事にしています。

  • エクセレンス…プレーのみならず、日々の生活の中で、仕事の中で個々の
    ベストを尽くし、目標を達成し、喜びを得ること
  • フレンドシップ…スポーツを通じて相互理解を深め、違いを超えて、ヒトとの絆を築くこと。
  • リスペクト…自分自身やその肉体を尊重し、他者を尊重し、決まり事を
    尊重し、スポーツとその環境を尊重すること。

平和の祭典であるミッションを土台にしていますので、バリューは比較的
分かりやすいですね。

ただ、オリンピック全体としては、ビジョンは分かりにくいと言わざるを
得ません。

オリンピズムの原則として、挙げられているのは次の6項目。

  1. Non-Discrimination (非差別)
  2. Sustainability.(持続可能性)
  3. Humanism. (ヒューマニズム)
  4. Universality.(普遍性)
  5. Solidarity.  (連帯)
  6. Alliance between sport, education and culture.
    (スポーツ・教育・文化の連携)

正直、この6つを挙げられても未来像としては分からないね

原則(Principle)ですから、未来に向けての価値観と言った方が近いですね。
実際、大会によって大会ビジョンが各国で制定されますし、オリンピック憲章も
こまめに更新されるので、逆に全体のビジョンは分かりにくくなっています。

TOKYO2020オリンピックの大会ビジョン(公式サイトより画像転載)
© 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

上記の大会ビジョンは、東京2020オリンピック公式サイトに掲載されています。
オリンピズムの原則には沿っていることが分かりますが

史上最もイノベーティブで世界にポジティブな改革を
もたらす大会って…イメージつかないね

正直、ビジョンとしては浅く、表面的なキャッチコピーになっていますね。
公式サイトを見るとレガシーといった横文字が多いので、理解することが
難しくなっています。

東京2020オリンピックにとっての「イノベーティブ」とは何か?
「ポジティブな改革」とは何なのか?何を目指していくのか?
軸としては弱く、ビジョンとして浸透しているとは言いがたいと考えます。

東京2020オリンピックに限らず、オリンピックの開催には様々な批判が
寄せられているのも事実です。

2 オリピズムと現実:理想と現実のギャップ

2.1 オリンピックに寄せられる理念への批判

クーベルタンの理念、オリンピズムから始まったオリンピックですが
規模が大きくなるにつれて様々な問題が明らかになりました。

理念批判を最初に始めたのは、民族主義と国家主義を軸とするファシスト達で
その流れはドイツのファシズム台頭へと続き、1916年のベルリン大会は
中止、やがて冷戦へと時代が動いていきます。

また、ネオ・マルクス主義の方々からは次のようなオリンピック批判が
なされました。

  • ナショナリズムを高揚させている
  • コマーシャリズムの対象となっている
  • 競争主義である
  • 男性優先である
  • 人種差別である
  • 暴力礼賛である
  • 名声を煽る
  • 技術の集中しすぎである
  • 視聴者を統合する
  • 政府の圧力を容認している

特にオリンピックと商業化の問題はずっと語られてきました。
こちらの書籍「オリンピックと商業主義」で詳しく分析されています。

2.2 オリンピックに寄せられる現実問題への批判

オリンピックって世界平和がミッションなんでしょ?
どうして商業主義のほうが問題になるんだろうね

最初の理念、オリンピズムがヒト・モノ・カネを動かしている原動力である。
それは事実ですが、国際大会であるために、各国の国策、政治経済における
国際関係への影響が計り知れないのです。

当然利権が動きます。
招致をし、オリンピックを題目に都市の再開発を行う。
そこで行政の予算が膨らみますし、環境破壊が行われます。
地価も上がり、福祉などへの予算が削られる。
そういった点に市民活動など批判が集中したのです。

全てのイベントにはネガティブな面も当然あります。
ネガティブ面を上回るだけのポジティブな面が伝わり、理念となるビジョンが
明確に言動で示されてることで一貫性や信頼感が生まれる
のです。

残念ながら、オリンピックの開催については、IOC委員への賄賂が発覚する
汚職問題が1984年ロサンゼルス大会以降、何度も起こっている。
オリンピック放映権も高騰しているし、大都市しかもはや招致できないような
状態になっている。

つまり、現状がオリンピズムの理念、大会のミッションを裏切っている
少なくとも残念ながら多くのかたにそう感じさせるために、オリンピックは
信頼や権威を失いつつあるのです。

ミッションが立派でも、言動の実情が伴っていないと
イメージダウンになるんだね

そう、これは企業などのミッションも全く同じです。
ミッションと言動、全てに一貫性がなければ、逆効果になります。

3 まとめ

オリンピックの理念は次のようにまとめられます。

  • オリンピックの理念「オリンピズム」はスポーツの国際大会開催によって
    世界平和を実現するという創始者クーベルタンの発案が基本。
  • 価値は明確になっているが、ビジョンは各大会によって不明瞭といえる。
  • ミッションと言動が伴っていないと、信頼や権威を損ね、結果として
    イメージダウンになる
    。これは企業なども同じである。

ミッションは、単に定めればいいというものではありません。
ミッションを発信し、全体に浸透させ、言動と一致させる必要があります。
言動を何度も見直し、ミッションに合っているのかを確認と修正を続けて
いかないといけません。

あなたのビジネスのミッションは定まっていますか?
定まっているならば、発信し、浸透させる努力をしていますか?
そして、言動と照らしあわせて、修正をしていますか?

ぜひ問いかけてみましょう。

お読みいただき、ありがとうございました!

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